スズ化合物環境技術協議会


有機スズ化合物に関する環境動向

T.
 
PRTR制度
(Pollutant Release and Transfer Register/化学物質排出・移動量届出制度)
 
    PRTR制度とは、毎年、どのような化学物質がどこから・どれだけ排出されているかを知るためのものです。 この制度は、平成11年に公布された 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(「化管法」、「PRTR法」とも呼ばれます。)に基づき 対象化学物質や届出をしなければならない事業者などがきめられており、平成13年4月に施行されました。
  ハロゲン樹脂用熱安定化剤や触媒などに使われるモノアルキルスズ化合物やジアルキルスズ化合物などを製造したり使用したりしている 事業者は、前年度に環境中に排出した量(排出量)と、廃棄物などとして処理するために事業所の外へ移動させた量(移動量)を自ら把握し、 「有機スズ化合物」として年に1回(4〜6月の間に)国に届出ることが義務付けられています。
「有機スズ化合物」の場合、平成15年度の届出分から1年間に1トン以上取扱う事業所が対象になりました。
 また、「PRTR法」に基づいて届出を求められる化学物質を他の事業者へ出荷する場合には、その性質や取扱い方法などの情報を記述した MSDS(化学物質等安全データシート)を提供することが事業者に義務付けられています。
 TETA会員各社は、PRTR制度を遵守し、メーカーの立場から環境保全に努めています。なお、事業者から国に届出のあった化学物質の排出量 ・移動量等については、経済産業省のホームページで公表されています。
  
U. 有機スズに関する環境省のモニタリング調査
 
   環境省は化学物質安全性総点検調査の結果により、昭和60年度からトリブチルスズ化合物の生物(魚類、鳥類、貝類)を指標とした 環境調査(生物モニタリング)を、昭和63年度からは水質及び底質についての調査も実施しています。また、平成15年度からはジブチルスズ 化合物の底質及び生物モニタリングを開始しました。
 平成17年3月に発表された平成15年度のジブチルスズ化合物のモニタリング結果は、底質及び生物に残留が認められました。
 モニタリングの結果については、環境省から「化学物質と環境」という年次報告書が毎年発刊され、環境省のホームページでも公表されています。
  
V. TETA会員による有機スズ化合物のPRTRおよび全国対比
 
   排出量に関しては、以下のグラフ(グラフ−1)のように全国に占めるTETA会員排出量の割合はかなり低い値となっており、また傾向的にも年々減少を続けている。数量的には平成26年度でTETA会員の全国に占める割合は0.06%(TETA会員3.6kg/全国5,699.2kg)となり昨年同様削減限界値になってきている。


グラフ−1


 詳細としてはTETA会員では、公共用水域への排出のみとなっているが、全国ではその数量の99.1%が大気への放出になっている。(グラフ−2)

グラフ−2



  
W. 有機スズ化合物に関する規制動向
 
  1.ロッテルダム条約
 貿易輸出管理令では別表第二の35-3の項に掲げる化学物質の輸出承認の対象として
(一)「国際貿易の対象となる特定の有害な化合物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約」で附属書Vに新たにトリブチルスズ化合物が追加され2009年2月1日から施行されましたが、2009年7月29日改正され0.05%以下の非意図的混入の場合は適用除外となり、輸出承認申請は不要となりました。


2.EUにおけるスズ規制動向
(1)REACH規則(SVHC)
  2014年12月以降、有機スズ化合物の中で、REACH規則SVHCの基準を満たす化合物※として、
  下記、化合物及び反応生成物がSVHCに指定されております。
@ ビストリブチルスズオキサイド (EC No.200-268-0、CAS No.56-35-9)
A ジブチルスズジクロライド (EC No.211-670-0、CAS No.683-18-1)
B ジオクチルスズ-ビス(2-エチルヘキシルメルカプトアセテート)
    (EC No.239-622-4、CAS No.15571-58-1)
C ジオクチルスズ-ビス(2-エチルヘキシルメルカプトアセテート)/モノオクチルスズ-トリス
    (2-エチルヘキシルメルカプトアセテート)反応生成物
    (但し、ジオクチルスズ-ビス(2-エチルヘキシルメルカプトアセテート)含有量が10重量%未満の場合は適用除外)

上記以外の限定されないジブチルスズ化合物、ジオクチルスズ化合物、ジメチルスズ化合物は、現在、SVHC基準に分類されていないために該当しない。

※−SVHCの定義(REACH規則 第57条)−
 1.CLP規則No1272/2008 (旧分類:指令67/548/EEC)に従い、発がん性、変異原性或いは生殖毒性(CMR)のある化学物質の
   カテゴリー1A、1B (旧分類:カテゴリー1、2)の分類基準に適合する物質。
 2.REACH規則附属書XVに定める基準により、難分解性、生体蓄積性及び有毒性(PBT)である物質。
 3.REACH規則付属書XVに定める基準により、高難分解性および高生物蓄積性(vPvB)である物質。
 4.上記基準に適合する物質に対するのと同等の懸念を生じる物質。例えば、内分泌かく乱性或いは、CMR、PBTあるいは
   vPvB物質の基準には適合しないが、人体の健康或いは環境に深刻な影響を与える可能性があるとの
   科学的な証拠が存在する性状を有する物質。

<SVHCに指定された場合>
(a) 混合物中に0.1重量%以上含有する場合はSDSの更新
(b) 成形品中に重量比(w/w)0.1%を超える濃度で、1年当たり合計1t(1社当たり)を超える量で含有される場合、
    ECHA(欧州化学品庁)へ届出
(c) 重量比(w/w)0.1%を超える濃度で含有し、かつ1年当たり合計1t(1社当たり)を超えない量の場合でも、
    成形品のユーザーからの要請があれば情報提供の義務が発生します。


(2)REACH  Annex XVIIによる有機スズ化合物の規制
 欧州委員会のリスク評価諮問機関より、有機スズの市場販売および利用に関する包括的なEU規制案が示されました。この内容は、欧州委員会企業・産業当局の依頼を受けて、英国のコンサルタント会社(RPA社)が実施したリスクアセスメントに基づくもので、欧州委員会より、2009年1月に有機スズ化合物を規制する案(REACH附属書XVIIの改訂)がWTOに通告されました。
この規制においては、ジブチルスズ化合物は、一部の用途においては規制開始の延期(2015年1月1日から施行)される用途もあるが、スズとしての含有量が0.1%を超える混合物や成形品及びその部品の多くは一般公共への供給が禁止されるのに対して、ジオクチルスズ化合物はスズとしての含有量が0.1%を超えるもので、主の使用において皮膚への接触がある限定された成形品及びその部品の一般公共、及び一般公共に使用される用途への供給は禁止(2012年1月1日から施行)されております。
但し、EUプラスチック施行規則(PIM)においては、食品容器包装用塩ビ製品への多くのジオクチルスズ化合物の使用は認められております。


 REACH Annex XVII 概要
 詳細はOfficial Journal of the European Union  L 86/7 1.4.2010
 「COMMISSION REGULATION (EU) No 276/2010 of 31 March 2010 amending Regulation (EC) No 1907/2006 of the European Parliament and of the Council on the Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals (REACH) as regards Annex XVII (dichloromethane, lamp oils and grill lighter fluids and organostannic compounds )」 参照


3置換有機スズ系化合物
 トリブチルスズ(TBT)化合物やトリフェニルスズ(TPT)化合物のような3置換有機スズ系化合物は、2010年7月1日以降、スズ換算0.1重量%を超える濃度を有して、成形品やその部品の中で使用されてはならない。


2置換有機スズ化合物
 ジブチルスズ(DBT)化合物は、2012年1月1日以降、スズ換算0.1重量%を超える濃度を有する混合物及び成形品やその部品は一般公共に供給してはならない。
 また、下記用途に使用する場合でも、 2015年1月1日以降、スズ換算0.1重量%を超える濃度を有する混合物及び成形品やその部品は、一般公共に使用、あるいは一般公共に供給してはならない。
   *1液型及び2液型室温硬化型シーラント(RTV-1及びRTV-2及び粘着財)
   *製品に適用され、DBT化合物を触媒として含む塗料及びコーティング剤
   *軟質ポリ塩化ビニル(PVC)プロファイル、単独あるいは硬質PVCとの共押出いずれも
   *屋外用途が意図され、DBT化合物を安定剤として含むPVCにより被覆された構造材
   *屋外用パイプ、雨樋及び付属品、同様に屋根及び外壁用材料を含めて


ジオクチルスズ(DOT)化合物は、2012年1月1日以後、スズ換算0.1重量%を超える濃度を有する混合物及び成形品やその部品の中で、一般公共に供給される、あるいは一般公共に使用される下記製品に限り使用してはならない。
 (その他の製品については使用の限定はない。)
   *皮膚接触用繊維製品
   *手袋
   *皮膚接触用履物あるいは履物の一部分
   *壁紙及び床材
   *子供用製品
   *女性用生理用品
   *おむつ
   *2液型室温硬化型成型材キット(RTV-2成型材キット)

ジメチルスズ(DMT)化合物については、用途・製品の使用制限はない。


(3)CLP(EU分類、表示、包装)規則の改訂
2013年にCLP規則が改訂され、有機スズ化合物では下記物質が新たに分類されCLP規則付属書VIのTable 3.1( 旧指令67/548ではTable 3.2)に掲載されました。


(a) ジオクチルスズ(ビス 2-エチルヘキシルメルカプトアセタート):
 生殖毒性カテゴリー1B (旧指令 67/548ではカテゴリー2)
 (a)は2014年12月SVHCに指定されました。
(b) ジメチルスズ(ビス 2-エチルヘキシルメルカプトアセタート)、モノメチルスズ(トリス 2-エチルヘキシルメルカプトアセタート)、ジメチルスズジクロライド、モノメチルスズトリクロライド: 生殖毒性カテゴリー2 (旧指令 67/548ではカテゴリー3)


この改訂により、上記物質及び混合物については、2015年6月1日以降、CLP規則付属書VIのTable 3.1に従った分類、表示と包装の義務が生じます。

3.労働安全衛生法
 2014年12月、ジブチルスズジアセテートが、労働安全衛生法における「変異原性が認められた化学物質」に指定されました。
 これにより、厚生労働省指針、「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針(平成5年5月17日付け基発第312号の3の別添1)」に定める措置を講じる義務が発生致しました。

4.毒物及び劇物指定化学物質
(1)ブチル(トリクロロ)スタナンの劇物指定について
2016年度、劇物指定物質にブチル(トリクロロ)スタナン(CAS.No.1118-46-3)が新たに指定されました。(政令改正は、2016年7月1日公布、7月15日施行。)

 

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